【ざっくり解説】岩瀬事件

どーも、奥野です。

今まで、漫画やアニメの話ばかりしてきましたが…
申し訳ございません、そろそろネタ切れです。
ですので、この先しばらくは税金が関わる事件について簡単に解説する新企画
「ざっくり解説」シリーズを始めさせていただきます。
過去の裁判の紹介させていただいて、税法について興味をもっていただければと思います。

初回は「岩瀬事件」です。


①概要
 ざっくりと言うと、「土地を売って、他の土地を買う」
 これが問題になりました。
 一見すると、何が問題か意味不明ですよね、ですが税法的には【交換】と【売買】には差が有ります。
 そして、今回の事件ではこの取引がどちらになるのかで争われました。

②流れ
 Aさん[土地7億円]
     ↑相殺↓
 Bさん[土地4億円+現金3億円]

 1⃣Aさんは、Bさんに土地を7億円で売却
 2⃣Bさんは、Aさんに土地を4億円で売却
 3⃣同日に売買を行いBさんは、差分の3億円をAさんに支払った
 ◎契約書は売買契約×2で、代金相殺+差額支払いの形式でした。

③なぜ問題になったのか?
 税務署はこれを「実質的には交換だ」として
 売買+差金ではなく
 「補足金付き交換契約」として認定
 → 交換の場合、交換資産の価額(時価7億円)+差額3億円=10億円を対象に所得課税だと言ってきました。

④裁判所の判断
 1審の地裁では、税務署の言い分を認め【交換】と判断され敗訴
 税金を納めない為の意識が明らかにあり、
 契約書を結んでいるが、実質交換になるとして【売買】ではないとしました。

 しかし、2審では逆転勝訴!売買にあたるとして税務署の判断を無効としました。
 また、最高裁は上告不受理で2審での判決を妥当としました。
 
 ●ポイント!!
  ・契約書どおり 売買形式 が採用されており、
   AさんにもBさんにも「交換の契約を隠して売買形式にした」事情はなかった。
  ・税負担を軽くする目的で売買形式を選んだとしても、それだけで“虚偽”とは認められない。
  ・よって、契約形式に従い、売買として課税するのが正当という判断になりました。
  
  ここで大事になるのは、裁判所も【売買】が目的ではないとは判断しましたが、
  税金を軽くする目的が有ったとしても優先されるのは法律であるとしたことです。
  このような法律を優先する考え方を【租税法律主義】と言います。

⑤まとめ
 1⃣契約形式重視の原則
  形式と内容が食い違っても、実際の契約書に沿って扱うのが大切。
 2⃣目的だけで形式を否定できない!
  「節税のため」でも、契約が偽装されていなければOK!
 3⃣租税法律主義の確認
  税務署は形式を勝手に交換に変えて課税できないため、法に基づいて判断されます。



 「こんな事件も解説してほしい!」があれば、コメントをお願いいたします。

 



注意:今回の事件は、平成初期の事件となりますので現在では課税対象となっております。
   税法は時代とともに変化いたしますので、ご不明な点がございましたら顧問税理士にご確認をお願いいたします。