「心なき者は、心ある者を説得できない」――アニマトリックス『セカンド・ルネッサンス』に見る、趣味なきビジネスの限界

どーも、奥野です。

人を動かす言葉とは、何でしょうか。
データでしょうか?
ロジックでしょうか?
実績でしょうか?

そのどれも大切ですが、私は「温度」が最も欠かせない要素だと考えています。

そしてその温度を支えているのが「個人の趣味」や「好きなものへの執着」です。

このことを強烈に思い出させてくれたのが、
短編アニメーション、『アニマトリックス/セカンド・ルネッサンス』でした。

 

 

「人間は、感情を持たぬ機械に支配されることを恐れた」

『セカンド・ルネッサンス』は、映画『マトリックス』の前日譚作品。
AI
と人類が対立し、戦争になり、やがて支配関係が逆転していく様を、圧倒的な映像と暗喩で描いています。

その物語の根底にあるのは、人間の傲慢です。

「私たちは、感情のない存在を理解できない。信頼できない。」

まさに、現代のビジネスにも同じことが言えます。
趣味も興味もない、感情が見えない相手に、私たちは納得共感を覚えることができないのです。

 

 

趣味のない営業トークは、人間味のないAIの演説

ビジネスの現場では、プレゼンの資料、ロジック、実績、ベンチマーク...
あらゆる「正しさ」が積み上げられた提案が飛び交っています。

でも、そういう場面でふと感じることがあります。

「あなたは、本当にこれが好きなんですか?」

趣味のない人の話し方は、どこか機械的です。
感情が希薄で、声に力がなく、説得よりも説明に終始してしまう。

それは、まるで『セカンド・ルネッサンス』に出てくるAIたちのように、正しいけれど、響かない話し方なのです。

 

 

趣味は、感情を言語化する練習場

趣味というのは、理屈では説明しきれない情熱のかたまりです。

・なぜこのキャラが好きか
・この作家のどこに惹かれるか
・なぜ何度も同じ映画を観るのか

そういった感情を言葉にしていく経験が、
顧客に対して「なぜこれを勧めるのか」を自分の言葉で語る力に繋がっていきます。

趣味を持たない人は、この訓練が圧倒的に足りない。

だから、「心のこもった言葉」が出てこない。

 

 

機械が支配した理由は、人間が心を失っていたからかもしれない

『セカンド・ルネッサンス』では、人間たちはAIに仕事を任せ、効率を追い求め、
やがて「自分たちの感情にさえ無関心になっていく」過程が描かれます。

それはまるで、現代のミニマリズム化した働き方や、没個性なビジネスマン像そのものです。

自分の「好き」や「美意識」を失ったとき、人は説得力も影響力もなくしてしまう。
気づかぬうちに、心のない機械と変わらない存在になってしまう。

 

 

お客は、正しい人ではなく語れる人に心を開く

「これが好きなんです」
「私はこう思うんです」
「誰が何と言おうと、これに惚れ込んでいます」

そんな言葉には、理屈以上の力があります。

そしてそれを支えるのが、趣味=好きで仕方がないものです。

 

 

あなたの趣味は、あなたの人間性の証明

「仕事ばかりで趣味がない」
「特に熱中してることはない」

それが当たり前のように語られる職場文化もありますが、私はあえて言います。

趣味のない人に、ビジネスは語れない。
なぜなら、その人には温度がないからだ。

 

 

あなたが最近、夢中になったものは何ですか?

・誰かに勧めたくなった映画
・つい時間を忘れて読み込んだ漫画
・生活を変えたお気に入りの道具

それが、あなたの説得力の源泉になるかもしれません。